民家再生あるいは、古民家再生が流行になっている現在とは違い、1980年代の価値観は、新しいモノは全て良く、古いモノは無価値であるような時代にこの江戸末期の民家に出会いました。　元々、離れに増築をする為に出向いたのですが、母屋のキズつき汚れた柱・梁を見た時に私は、新しく増築するよりも再生するほうが良いと思いました。　しかし、当時は古民家を元通りに復元した事例はありましたが、現代の生活様式にあった再生（蘇生）した事例はほとんど無く、解体してマンションでも建てて最上階を住まいにする案が一般的な時代に、施主と建設会社そして、私たちの思いを込めて完成させた古民家です。　　 平井憲一

■掲載誌 ： 建築文化 1983年7月号（Ｎｏ．441） ・ 読売新聞1983年7月22日掲載